◆長期間放置される「無縁墓」が増加している
「雑草に覆われて墓石も見えない」などの「荒れ墓」、使用者が不明の「無縁墓」は増え続けている。
無縁墓とは、何年もの間に渡ってお墓の維持管理料が墓地やお寺などに支払われず、そしてお墓に眠る故人に縁のある人に一切連絡が取れなくなってしまったお墓のこと。墓地に放置されてしまったお墓です。
長期間放置されたこうした無縁墓は最終的には処分されて、遺骨は無縁仏として合葬。その跡地は更地化されるのですが、増加する無縁墓への対応に地方自治体も苦慮しているのだそうです。
◆地方では特に顕著で、山間部では8割が「無縁墓」という例も
無縁墓は全国で増加傾向にある。東京都の都立霊園では、2012年度に約350基の墓を撤去。この5年間で約1000基を整理したという。
大阪市が管理する霊園では、お盆やお彼岸でも誰もお参りに訪れない墓が増えています。しかたなく撤去した無縁墓の数は、15年間で4,000基余り。5億円近い費用がかかりました。
熊本県人吉市が市内の墓地995か所の現況調査を行なったところ、全1万5123基のうち実に4割の6474基が無縁墓だったことが判明した。山の奥地にある墓地では、なんと8割が無縁墓になってしまったところもあったという。
◆背景には核家族化や少子化による従来の「家制度」の崩壊がある
今の60〜70代にすれば、墓には親や同居していた祖父母が入っていることが多かったので、その親近感から多くの人が墓参りに行っていました。ところが、核家族化が進行した結果、孫世代が墓守になるころには、墓参りする人もぐんと減り、一気に無縁墓が増える。
少子化で墓守の該当者が少ない上に、未婚率が上昇してもいる。男性の50歳時点の生涯未婚率は1965年に1.5%だったが、2015年には23.4%に上昇。子供のいない家の墓は途絶えるしかない。
宗教学者の山折哲雄さんは、この問題の根底には、墓を守っていくうえで重要な役割を果たしてきた家制度の崩壊があると指摘「従来の伝統的な家制度の中で作られたお墓信仰は崩れざるを得ない」。
◆そんな中「墓じまい」を選択する人たちが増えている
いま、先祖代々受け継がれてきた墓を更地に戻す「墓じまい」が急増している。
高齢者の中には「残される子どもにお墓のことで負担を掛けたくない。いつか無縁墓になるのならば、今のうちに適切に処分したい」という思いから墓じまいをしようとする人も増えているのだといいます。
◆「墓じまい」には行政の許可など様々な手順がある
墓じまいとは「お墓から遺骨を取り出し」「墓石を撤去・処分し更地に戻し」「遺骨を新たな場所に埋葬する」という一連の手順のこと。
遺骨を取り出すためには、お墓がある自治体から「改葬許可証明書」という許可書を取得しなければならず、そのためにはお墓を管理する墓地や寺院が発行する「埋葬許可証明書」と移転先の墓地が発行する「受入証明書」という2つの書面が必要になる。
遺骨を取り出すためには必ず移転先を決めなければなりません。その方法にはお寺が遺骨を永久に管理して将来的には合葬する「永代供養墓」や「納骨堂」への埋葬、「樹木葬」、「散骨」といったもの。
◆意外にかかる「墓じまい」費用
「墓じまい」をするときには、墓石を移動もしくは処分して、土地は更地にして返却(約15万円~30万円程度)します。
「墓じまい」をするということは「寺院の檀家から離れること」でもあります。一般的に、寺院の檀家から離れるときには離檀料(約10万円~30万円程度)を払います。
納骨堂の費用は、種類や規模、供養方法や納骨する人数などによって変動します。一般的な目安として、一人用の納骨堂だと平均50万円程度で、家族用になると100万円を超えます。
「墓じまい」後に納骨堂を選択した場合
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